『コーヒー おいしさの方程式』紹介 (5)

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前回(昨日)目次内容を紹介しましたが、「"From Seed to Cup" なんて大層なこと言ってるけど、別にこれまで他の人が出した本だって、生豆、焙煎、抽出くらいカバーしてるじゃない」と思われた方もいるかもしれません。その通りです。目次で内容を並べただけでは、そこにはあまり目新しさは感じられません。今回の本での新しい点は、紹介(2)の最後で述べたように、それらにより「科学者の視点」を加えた、という点です。


左に示したのが、私の視点から見た「From Seed to Cup」の大まかな全体像…スペシャルティ大全と本書に提供した図の、原図を配置したものです。

適当に並べたもので、この全体像そのものは本書には乗ってませんが、図の左側が "Seed"、つまり品種や栽培、そこから精製を経て焙煎(中央と下)、そして右側の抽出を経て、最終的に右上のフレイバーホイール…つまり「カッピング」まで辿りつきます。


「品種」「栽培」「精製」「焙煎」「抽出」といった、各要素ごとに考えることは「還元主義」的な手法に従っていると言えます。物事をより深く、突き詰めて理解するためには、こうした考え方が非常に有効です。ただし還元主義的な手法では「木を見て森を見ず」にならないように注意しなければなりません。要素を細かく分け、その一つ一つに目を奪われすぎる結果、全体像を見失ってしまうという、落とし穴にはまってしまうことがしばしばあります。「細部」と「全体」、両方をバランスよく見据えていくことが重要です。


本書では、田口さんの一人称で話が進む中、私が何度もしゃしゃりでてはコメントを付ける形なのですが、私の考え方の中心になっているのは、コーヒーに含まれる様々な成分…中でも香味に関わる成分が、どの段階でどのように推移していくかという点です。スペシャルティ大全に提供した「焙煎アロマ/テイストチャート」がその最たる例なのですが、やはりこれがすべての「中心」になっています。

コーヒーに限らず「おいしさ」を科学的に捉えようと思ったら、「まず最初に」香味成分のレベルまで細かく掘り下げるところから始めなければなりません。これも「還元主義」的な考え方です。必要な分だけ細かな要素…場合によっては一つ一つの成分にまで分解して、初めてその正確な動きを把握することが可能になるからです。またもちろん、これも分解した後は、最終的にまた組み立てて、全体像として考えることの大事さは言うまでもありませんが。