はじまりの物語 (13)

#ゲマルディンことジャマールッディーン・アブー・アブドゥッラー・ムハンマド・イブン・サイード・アッ=ザブハーニーの謎に迫る、その2


前回からの続き。いろいろと仮説をこねくり回すので、考えがあっち行ったりこっち行ったりします。

まずおさらいをかねて、ザブハーニーに関する二つの史料の内容について『コーヒーとコーヒーハウス』(ハトックス著、斉藤・田村訳、同文舘、1993年)からの引用を示す。


アブドゥル=カーディル『コーヒーの合法性の擁護』に引用された、イブン・アブドゥル=ガッファールの著述からの引用。

聞くところによると、ザブハーニーがコーヒーを導入した理由はつぎのとおりである。なんらかの理由で彼はアデンを去り、エチオピア(引用注:ド・サッシー訳の原文では「アジャムの地」"terre d'Adjam")に赴き、しばらくそこに滞在しなければならなくなった。そこで彼は、人々がカフワを用いているのを発見したが、その性質についてはなにも知らなかった。アデンに戻ってから彼は病に伏し、カフワのことを思いだして飲んでみると効きめがあった。カフワは疲れやだるさを取り去り、からだにある種の精気と活力をもたらすことを彼は発見した。その結果、アデンで彼とその仲間のスーフィーたちが、カフワから作った飲み物を用いるようになったといわれている。(ハトックス/斉藤・田村 p.21-22。括弧内の注は引用者による)


サハーウィーの『輝く光』の内容に関する記述の引用。

彼(ザブハーニー)は若いころ真面目に勉強し、短期間教師をしたのちスーフィーになり、神秘主義的作品の著述に没頭した。彼は隠遁者で、外出するのは金曜日の礼拝か重要な人々に会うときだけだった。彼は神秘主義の本のほかにも多数の本を書いている。(ハトックス/斉藤・田村 p.23)