Q. 新型発生のメカニズムは?

A. よくわかってません。というより、そもそもコーヒーさび病菌の生態に不明な点が多く残ってます。


先述したように、コーヒーさび病菌は夏胞子で感染・増殖します。このとき増えるのは、すべて同じ遺伝子を持ったクローンであり、そこで新型が生まれる可能性は低いだろうというのが一般的な考えです。カビの仲間は通常、この夏胞子のような無性生殖の世代以外に、有性生殖の世代を持っています。サビキン類も同様です。サビキン類には無性生殖世代と有性生殖世代とで、寄生する植物の種類が異なるケースが多く知られています。コーヒーさび病菌の場合も、担子胞子という、有性生殖の一歩手前で作られる胞子(ヒトで言えば精子卵子に近い)をコーヒーノキに振りかけても感染しないため、何か別の、まだ見つかっていない有性生殖世代の宿主がどこかにいるはずだと考えられています。


無性生殖ではクローンだけが増えるのに対して、有性生殖で生まれるのは、両親の遺伝子を受け継いだ子どもになります。それで遺伝子の組み合わせに変化が生まれるため、有性生殖で新型が発生する可能性が高いと言えます。「有性生殖世代の宿主探し」が、新型発生のメカニズムの解明にもつながっているのです。


この「もう一つの宿主探し」の研究は長年続けられていますが、なかなか成果が上がってないのが現状です。最近では「有性生殖に頼らずに、新型が発生しうるメカニズム」を提唱しようとしている研究グループもあります(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22102860)。