Q.これまでも対処してたのに、何で今、中南米で流行してるの?

A. 正直言うと、情報不足でよく判りません。ただしコロンビアやグアテマラでは従来のタイプと違う点もあって、「新型か?」と言ってる人がいます。


中南米では、1970年にブラジルでコーヒーさび病が初めて発生して以降、1970-80年代にかけて各国で発生して大きな問題になりました。その結果として、中南米各国で耐さび病品種の作出が行われて栽培されるようになりました。これらの耐性品種はいずれもアラビカとロブスタのハイブリッド品種で、耐病性や収穫性の高さを保ちながら、できるだけ品質も高いものが選抜育種され、近年では従来のアラビカの香味と遜色ないと評価する専門家も増えています。しかし、初期のハイブリッド品種の低品質なイメージが根強く、未だに「ハイブリッド品種は従来のアラビカよりも劣る」という風評はなかなか市場から払拭されないため、さび病に弱い従来のアラビカの品種に対する需要も大きいままです。

そこで、上述のように、さび病のリスクが大きい低標高の農地では耐病性ハイブリッド品種をメインに、リスクが小さい高標高の農園では従来のアラビカをメインに作るという、植え分け方法が普及しました。一般にアラビカは、標高の高い農園ほど品質が高いものが採れるため、その点でもこの植え分けは理に適っていたと言えます。近年の中米では、別の病気(ベリーボーラーによる虫害と、ネコブセンチュウによる病害)の方が、さび病よりも大きな問題だと考えられていました。

2009年コロンビアの例

ところが2009年2月にコロンビア中部のノルテ・デ・トリマ州とカルダス州から、従来はさび病の発生があまり見られなかった農園で、カトゥーラという従来品種に、ひどいコーヒーさび病が発生したという報告がありました(http://www.promedmail.org/direct.php?id=20090225.0773)。その状況や、従来のさび病よりも被害拡大のスピードが早いことから、新型のさび病が発生したのではないかという噂が流れました。翌2010年5月にはコロンビア南部のナリーニャ州で、同じくコーヒーさび病発生の報告が出ています(http://www.promedmail.org/direct.php?id=20100526.1745)。

2011年グアテマラの例

その後、2011年11月にグアテマラから(http://www.agra-net.com/portal2/home.jsp?template=newsarticle&artid=20017921013&pubid=ag049さび病流行が発生したという報告がありました。2012年5月にグアテマラの続報(http://www.promedmail.org/direct.php?id=20120511.1129720)が出た際は、ロイターでも取り上げられ(http://uk.reuters.com/article/2012/05/08/guatemala-coffee-idUKL1E8G7ODJ20120508)、ここで「従来より高い標高で発生している」「従来の殺菌剤に抵抗性かもしれない」などという記載が見られます。

それ以外での発生

とりあえず、コロンビアとグアテマラ以外では、下記の地域で発生した報告やニュースが出ているようです。多分、これからも増えることでしょう。ニュースで一文記載されてる情報レベルであれば、メキシコやニカラグアでも発生している可能性があります。ただしいずれの場合も、新型を疑わせるような具体的な記述は必ずしも見られません。


状況的に現在は、グアテマラで流行しているのと同じタイプのものが中南米で流行している可能性が高いと思われます。しかしグアテマラのものも、あくまで「談話」の域を超えず、新型なのかどうかの判断はできないのが現状です。