Q.対処法はあるの?

A. 農薬による防除や予防が有効です。また、さび病にかからない耐性品種がすでに開発され栽培されてます。さび病の特性に注目して、栽培方法の工夫で被害を軽減することも可能です。実はもうすでに、これらを組み合わせて対応されています。


野菜や果物のカビ病対策に用いられる、一般的な農薬が、コーヒーさび病にも有効であることが判っています。比較的新しく開発されている、有機化合物系の殺菌剤だけでなく、古典的な殺菌剤の一つとして有名なボルドー液でも、十分な効果を発揮します。ただし病状が進行した後では効果は低くなるため、さび病が特に発生しやすくなる雨季の直前に、ある程度予防的に散布するのが最も効果的だと言われています*1


また最初に栽培されたアラビカ種がさび病に弱かったのに対し、その後に発見されたロブスタ種(カネフォーラ種)は、さび病に対して非常に優れた耐性を示すことが判りました。ベトナムインドネシアなど東南アジアや西アフリカなどでは、ロブスタ種が栽培されています。ただしロブスタは収穫性や耐病性では優れているものの、アラビカに比べると品質がかなり劣ると評価され、安価で取引されています。そこで現在は、多くの生産国でアラビカ種とロブスタ種を交配したハイブリッドの耐性品種が作られており、中南米などでも(生産量ベースでは)ハイブリッド品種の方が主流になっている国もあります。


コーヒーさび病は、気温がある程度高くて湿度が高いほど、発生しやすく重篤化しやすいことがわかっています。コーヒーは熱帯地方原産の植物なので、気温と湿度が高いところで育つと誤解されがちですが、現在生産量の6-7割程度を占めるアラビカ種は、熱帯地方と言っても標高が高いエチオピア高地の原産で、年間を通じて15~20℃という涼しい環境を好むため、標高 1000~2000 m 付近で栽培されています。気温は標高に反比例するので、さび病の被害を受けやすい低標高の農園には上述の耐病性のハイブリッド品種を植え、標高の高いところには従来のアラビカ種を植える、という方法を採用している産地も多いです。またその他の栽培方法も、さまざまな形でさび病のリスクに影響することが指摘されています*2

*1:農薬使用の是非については、ややこしい問題です…というか無農薬を『異様に』信奉する一部の消費者が奇妙な主張をして議論をぐだぐだにしてるケースが大半だと思います…が、生産者側にもできれば使わずにすませたいという人は多いです。ただしそれは「安全性が~」云々とかいう生っちょろい話ではなく、もっと切実かつ単純な、コストの問題です。そもそもコーヒーは生産者の取り分が小さいので、余分なコストは掛けずにすませたい、というのが最大の理由になっています。

*2:例えば、密集栽培すると、地表が覆われて湿度が上がりやすくなることで発生のリスクが上がり、発生時の伝染速度も早くなることが指摘されています。生産国によっては「シェードツリー」と言って、バナナなど他の植物を植えた下にコーヒーノキを栽培する地域があります。シェードツリーの影響は非常に複雑で、品質を上げるうえでは有効だという報告も国によってある一方、さび病に関しては(流行初期には有利に働く面もあると言われてますが)地表の湿度を上げ、さび病のリスクを増加させることが指摘されています。