『コーヒー おいしさの方程式』紹介 (3)

#表紙を紹介


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もともとこの企画は当初、「コーヒー大全3(仮)」というコードネーム(?)でスタートしました。版型の変更や書店での混乱を避けるためなどいろいろな要素を踏まえた結果、この『コーヒー おいしさの方程式』という書名になりましたが、最後の最後まで、書名を『田口護の (なんとかコーヒー)大全』にして「珈琲大全・三部作」にするという案も残っていました。


その関係もあって(?)、田口氏が一人称で語るというスタイルはこれまでの「大全」と同様に踏襲されてます。SP大全のときと同様、そこに私が学術論文などから引っ張り出してきた内容をもとにコメントをつけてるわけです……そのしゃしゃりでてくる箇所がSP大全のときよりもさらに増えた感じ、というと既読の方にはわかりやすいでしょうか。


共著とはいっても章ごとにそれぞれ分担するのではなくて、コーヒー豆、焙煎、抽出などそれぞれのテーマについて、「技術者」である田口氏の見方と「科学者」としての私の見方という、異なる二つの角度から見た、いわば「二冊分のシナリオ」があったわけです。ただでさえ、どちらもなかなかに難しい話なのに、それがさらに倍。私と田口氏の考えは、切り口は異なっていても結局辿り着いた結論はほぼ同じだったわけですが、それでも二通りの筋道を逐次解説していくのでは、あっちいったりこっちいったりして、読んでる人が混乱するだけです。


そこで、それを一つにまとめて統合してくれたのが嶋中労氏です。普通の本書く10倍以上に疲れ果てたそうですが(笑)、『コーヒーに憑かれた男たち』『コーヒーの鬼がゆく』などのコーヒー関連の名著で知られる嶋中氏を以て、「想像以上の出来映え」「当人がすばらしいというのだから間違いない」という渾身の一冊とのこと。実際、私も校正のための原稿を読んでたはずが、いつのまにか校正するのを忘れて思わず読み込んでたりしました(しかも自分が草稿書いた箇所だったりするのに)。


田口氏と私の二冊分のシナリオ、一つにまとめあげるに当たってどちらをベースにする方が読者にとって読みやすくなるかというと……想定される/読んでもらいたい読者の多くは「コーヒー関係者や、コーヒーに関心がある人」であって、「科学者や、科学に関心がある人」の方が少ないでしょうから、田口氏のものになります。というわけで、これまでの「大全」と同様に、田口氏が一人称で語っていくスタイルになりました。


読者は田口氏の目線で……つまり、科学的な専門知識は一般人レベルの「コーヒー屋の主人(=田口氏*1)」が、私の語る「研究者たちの視点から見たコーヒー」のことを聞きつつ、これまで自分が培ってきた経験、すなわち「コーヒー技術者の視点から見たコーヒー」の姿と照らし合わせていく……そういうストーリーを思い浮かべつつ読むと、すんなりと内容が入ってくるかもしれません。

*1:実際のところは、田口氏の科学知識は全般に、いわゆる「一般人」のレベルより高いのですが……『日経サイエンス』購読して隅から隅まで読んだり、普段見るテレビ番組がディスカバリーチャンネルだったりする人でもあるので。