コーヒー界のセントバーナード:マラゴジッペ
上に挙げた一つ目のタイプの「エレファント・ビーン」は、一つの木に出来た生豆の一部に、巨大な豆が出来るものである。エチオピアなどでは、その巨大な豆が全体に占める比率が高くなる傾向があるが、それでも出来る生豆全部が巨大化するわけではない。これに対して、もう一つのタイプであるマラゴジッペでは、一つの木に出来た生豆「全部」が巨大になる*1。
マラゴジッペ (Maragogype*2、マラゴジーペ、マラゴギーペ) も、カトゥーラと同様非常に古くから知られていた品種の一つであり、いつ頃、どこで生まれたものなのかは判っていない。ただし、少なくとも19世紀末には発見されており、1898年にはA. FroehnerがC. arabica var. maragogypeという変種として名前を付けている。発見されたのが、ブラジル・バイア州のマラゴジッペ地区であることからこの名がついた。
(いちばん右がマラゴジッペ:中央がティピカ(ブルーマウンテン)、左は矮性品種のモカ)
(協力:カフェバッハ)
マラゴジッペでの生豆の大型化は交配異常とは無関係である。染色体数も2n=44で、通常のアラビカ種(ティピカやブルボン)と同じだし、一つの種子にある胚乳の数も一つのままだ。またマラゴジッペで大きくなるのは、生豆だけに限らない。果実も葉も、そして節間の長さも、通常の品種よりも大きくなっている。後に、カンピナス農業試験所で行われた研究の結果、この巨大化は遺伝子*3一つの突然変異によって生じるものであることが判明した。この大型化に関わる遺伝子はMgと名付けられた。Mgは完全優性を示し、MgMgまたはMgmgはマラゴジッペと同様に巨大化し、mgmgが通常の大きさになる。マラゴジッペは、ブルボンではなくティピカが変異して生じたものであることが判明している*4。