”All About Coffee”に見る、スマトラ産コーヒー

マンデリンは、古い文献でしばしば「最高級コーヒーの一つ」と記載されている。Ukersの"All about coffee"の初版(1922年)でもマンデリンについて、

"The best coffee in the world"; also the highest priced.

と記している。このことは、今でも国内の評判が高いことと無関係ではないだろう。


All About Coffeeは、1922年に初版が、1935年に第2版が発行されているのだが、実はマンデリンを含む、スマトラ産コーヒーについての記述は、初版と第2版で異なっている。

第2版においてスマトラ産アラビカであることが明確なものは、

  • Mandheling (Padang)*1, Ankola (Sibolga), Toba

の3つである。これらはいずれも、それぞれ上述したバタック族支族、すなわちマンダイリン(Mandailing)、アンコーラ(Angkola)*2、そしてトバ(Toba)・バタック族を意味する。


一方、その13年前に刊行された初版には、MandhelingとAnkolaの記述が見られるものの、Tobaについての記載はない。第2版の中で、Tobaの項には "New native plantations."と書かれており、比較的新しい現地人の農園であったことが伺える。その一方で、初版には、マンデリン地区よりもさらに南方の西スマトラ沿岸に位置するパイナンやインドラプラなどの銘柄が見られる。これらの港町を有する西スマトラ地区はミナンカバウとも呼ばれ、バタック族とは別の、ミナンカバウ人とよばれる民族が暮らす地域である。

*1:括弧内に示したのはその主要積出港の名前である。

*2:"Ankola"については、インドに同名の積出港があるためか積出港の名前として書かれた文献が散見されるが、Ukersの記載などに照らしてもアンコーラ・バタク族を意味すると解釈するのが妥当である。